2016年7月7日木曜日

ロンドンスパイ 男の濡れ場だけが見どころではない。London Spy

ロンドンスパイが本国放映されたころ、なぜか日本でもリアルタイムで話題になっていました。男同士の激しい濡れ場ばかり語られているドラマに、イマ一歩興味をそがれてたのですが・・・

結論を言っちゃうと、役者さんに120%魅せられるドラマでした。こんなに圧巻なドラマだとは思ってませんでした。

数か月前、私のあたまん中↓
ベン・ウィショーはいい役者さんだと思うしそこそこ好きだけど、追っかけるほどでのファンでは私は、ない。
エドワード・ホルクロフトはキングスマンで初対面。役柄のへたれチャーリー(最初の時にめっちゃ目立つエルメスエンブレムのベルトのいかにもさは爆笑)、お笑いと性悪ぶりにあんまり興味は持てず、エド君自身にも興味は持てず。ブロマンスウケを狙ってるかのように、タロン君にくっついて見せる姿ってうさん臭いのよね。余計にスルーしたくなっちゃう。(ごめんねー、興味持てなかったの)

ロンドンスパイが話題になってた時にも、一般に強調されてるのが「激しい男の濡れ場」というそれだけ。そーいうわざとらしいのにあえてついていこうって気が余計にしなくなっちゃうのよね、このトシになると。思いっきりしら~~~と冷めておりました。

身を乗り出したのは、BBCシャーロックの過保護兄、マイクロフトのマーク・ゲイティスも出てると知ってから。
あら、あたし、マイクロフト兄さんは大好きなのよ。じゃぁ、買おうかなあ、DVDとなりました。(買ったらネトフリで配信もされてたわ。まぁ、私は契約してないので)

GW中に見ようと思って買ったけど、先に機械に入れたトゥルー・ディテクティブにはまり、放置しちゃってました。
それをやっと見ました。なんか為替が下がりつづけてると、買って観てないのがめっちゃ損した気がするから・・・・

それがそれが…!

もっと早くに見とけばよかった。圧巻です。役者さんの素晴らしさがフルに活用されているドラマでした。あらすじ自体は、少女漫画チックな気がします。たぶん私がこれを○十年前に見たのであれば、今でも心酔しているポーの一族くらいにはハマっただろうと思う。

ただ、トシとってこっちの感性も現実的に冷め気味になっているのであらすじ自身は突っ込みどころが…と思わないでもないです。感覚的には近年のリュックベッソン映画に見られるリアリティもなく、シンパシーも全く感じられない、スパイと何やらの恋・・・のような感じです。冷静にみると、その点は。(ただ、後半謎解き部分で起きること、明かされてくる部分の不気味な怖さ別格です。こんなことがあると思いたくないです。)

ですが ロンドンスパイの凄いところは、演じている役者さんたちの質が高く、表現力が素晴らしくって、惹き込まれてしまうので、お話のツッコミどころなんて、まったく目に入らないの!

とてもconvincingに、寂しい孤独な二人が出会って恋に落ちたところから悲劇が始まる・・・お話に出来上がってしまうのです。


その後の展開の不気味さ、静かに実はえげつない演出。これが一気に深みを与えてくれます。派手さはまったくない実直路線。そしてこのドラマ、音楽の選曲もいい。オリジナルスコアは単調にやや地味めで、このドラマに漂う、ジョージ・オーウェル、1984を彷彿とさせる感覚にとてもあっています。そう、今の時代とは思えない、というか世の中かわらず不条理とでもいうことなのか。

EP1 最初のシーン、繁華街をさまよっているらしいダニーの姿に重なるのはなんと!ドナ・サマーのI Feel Love. 子供の頃そこかしらで流れていた懐かしい、テクノポップ。
ちなみにロンドンスパイのミュージックリストはこちらで聴けます。音楽についてはまた後程。

I feel love はこの後、ジョギング中のアレックスに出会い、ときめき、再会を願って空々しく同じ場所に居合わせてみるダニーの心情にとてもぴったり。

ダニー演じるベン・ウィショーの素晴らしいこと! 結構、セリフもなく、ダニーがあちこち歩き回ったり、ダニーの視線の先をカメラが映しているだけらしいシーンとかがのかなりあるのですが、そんなシーンでも絶対外さないベン・ウィショー。あらためてその演技のすばらしさに魅せられました。
この半年ほどの間にベン・ウィショー、頻繁に見ています。007スペクター、リリーのすべて、そしてこのロンドンスパイ。 皆全然違うのよね。さすがです。

 
で、激しい男同志のの濡れ場があるのは第1話のみです。あ、あともうちょい回想シーンであるか。第一話の間に8か月が経過してしまうのです。8か月がそそくさと経過して悲劇が起きます。そして第2話以降は恐ろしい悲劇と悲劇の謎ときに明け暮れるのです。

単調めのBGMで、ひたすらダニーの目線を追っているようなカメラワーク。これは役者さんが素晴らしくてこそ成り立つのです。


メインの登場人物がとにかく皆いい味出してます。キャラが際立っているのです。

自虐的で破滅的な生活をしていた、まだ少年だったダニーを拾って以降、何彼となく相談相手になるスコッティ。ジム・ブロードベント氏、見たことあるけど・・・観たことあるけど何に出てたんだっけ・・・と思ったらブリジット・ジョーンズのなんかさえないお父さんでした。あらまぁ・・・。でも今回は全然違います。


このドラマ主要な男性陣はみなゲイです。そしてダニー以外大半がケンブリッジ卒という、なんともまぁ、アナザーカントリー実録版の様相。ダニーの父親のようなスコッティも、もれなくそうなのです。

スコッティはケンブリッジ在学中にリクルートされ、MI6に。ある日列車の中のコンパートメントで出会った男性とちょっとアバンチュール。すると後日ソ連エージェント(当時はまだKGBですね)にコンタクトされ、コミュニストの世界ではゲイであっても平等だとヘッドハンティング。このころの英国では同性愛は違法。

もちろんお断りしたものの、実はKGBではなく同胞の志のスパイ狩り。結局MI6からは放免され、運輸省の事務方へと左遷。スパイとしては失脚したのでした。スコッティは若いダニーに女工哀史さながら(?)のゲイ哀史を語ります。家族が決して認めず、パートナーが危篤でも病室にも入れてもらえない。亡くなっても葬儀すら知らせてももらえない。そんなゲイ仲間の嘆きをずっと聞いてきたスコッティ。エイズが疫病と呼ばれ、正体も分からなかったころにスコッティの芸術家の恋人はエイズで死んだ。 
ダニーの世話を焼くのは、これまでに何もしてあげることができなかった友人や恋人への罪滅ぼしでもあるのでしょうか。スコッティがお話にとても深みを与えてくれます。
ちなみにジム・ブロードベンド氏、Eddie the Eagleにもキャスターとして出てました。とても不思議な気持ちになったわ。

それからダニーと恋に落ちるアレックス。15歳でケンブリッジ大に行った天才。賢過ぎて人とうまく付き合えない。ずっと孤独に過ごし恋なんて縁のないものと一生一人でいるくらいのつもりでいたところにダニーに出会い、ぶっちゃけナンパされます。ダニーが初めての恋人。
エド君、見直したよ! キングスマン2でのリターンは承知だけど、あんなオバカチャーリー役をやってるにはキミはもったいなすぎる!!!




ふたりは生まれも育ちも180度違うのですが、(あ、でも実はアレックスはアッパークラスの家の養子ですけど)ダニーもアレックスもそもそも親の愛情に飢えていて孤独。アレックスは孤独を受け入れ人々に背を向けていたけど、ダニーは孤独を埋め合わせてくれる恋人を求めて彷徨う。こんな二人が運命的出会いをして恋に落ちて、悲劇が起きるまでが8か月。EP1ですでに8か月が経過してダニーが恋人アレックスをスコッティに紹介。ダニーを大事にしてやってくれ(傷つけないでくれ)とアレックスに言うスコッティ。ダニーがただ一人の友達だからそれは絶対ないというアレックス。

この後、連絡が取れなくなるアレックス。変死体で自宅の天井裏で見つかります。発見者はダニー。事情聴収でアレックスが自身についてダニーに告げていたことがほとんど嘘だったとわかります。そして二人の行動が明らかに何者かによって監視され盗聴されていたことも分かります。

アレックスが発見された天井裏にはSM用の大人のおもちゃがぎっしり。新聞にはスキャンダラスな事件のように書きたてられますが、ダニーはアレックスが何らかの理由で殺されたと確信し、各種メディアに訴えようとしますが相手にされません。

謎解きをしようとするダニーにその最初は何も語られなかった8か月が次々と回想シーンとして出てきます。アレックスの寒々とした孤独。

『ずっと同じところから歩き始めてまた歩き続ける男がいる。男は皆が飲んで談笑したりしているのに背を向け、ずっと歩き続ける。全く関心ないかのように。だが、男の心の中はまったく逆だった。
誰かがそれに気づいて隣に来て話しかけてくれたらいいのにと男はずっと思っていた。

その男は僕だ。そしてキミ(ダニー)はその誰かだった。』 

・・・なんて切ない話なのだろう。

奔放な恋愛をしてきたダニーにはアレックスとの恋が特別だと確信できる。だけどアレックスが自分を特別とする理由が最初の恋人だからというだけなら嫌だ。だからほかの奴とも付き合えというダニー。そんなことしたくない、必要ないと涙ぐむアレックス。

・・・エド君、なんて顔をしてるんだ・・・。オトコがめそめそするんじゃねぇ-!!!と言いたいところだけど、なぜかもらい泣きしちゃうじゃない。エド君のお顔は私の好みでは全然ないの。でもいい役者さんなのは確かです。とても切ない表情をします。

あっさりと死んでしまうので、えっ!?これだけだったの?と一瞬思いましたが、あとあとの回想シーンではいろいろな表情を見せてくれました。

やはりおしゃべりな私は長くなりがち・・・なので、知らずに遭遇して大感動のシャーロット・ランプリング女史、いやぁ、もしかしたら彼女が一番圧巻だったかも?とかはあらためて。
こういうゲイものはやはりテーマがジェンダーになるのか(いやその通りなのか)フェミニズムとセットの様相。彼女は年老いても、しわがあってもその威厳で人を圧倒しますねぇ。

彼女に関してと、音楽とかその他はまた別途ページを割きます。

胡散臭いなんて思って放っておいてソンした気分でした。

















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