2017年1月26日木曜日

ウェイバリー課長にこれほどふさわしい人はいないっ  マダム・フローレンス夢見るふたり 脱線感想文

何をいきなり今更・・・・と思われそうですが。いえトーゼン思いますよね。

過日マダムフローレンス見てきました。


メリルストリープとコードネームアンクル、新ウェイバリー(課長)のヒューグラントが共演の映画。
実在した裕福な超絶音痴の歌姫のお話です。 一応真面目(?)レビューと銘打った駄文はこちらに。



トレーラーを見る限り、ヒューグラント、相も変わらず、顔だけのひも男・・・のように思えたのですが(何しろ妻はケタはずれの資産家)、これが全然違っていたのです。

夢見るふたり・・・とのサブタイトルに、ぺこ&りゅうちぇるのじじばば版みたいなののコメディ?とかも思いましたよ。これも見事にハズレ。いつもよりやや目つきの鋭いヒュー様、映画を観れば納得します。

妻のひとめぼれで結婚して25年。夫は元俳優の英国人。父親は侯爵だけど庶子なので相続権はなく、アメリカに渡って俳優になった。

資産家の妻に惚れられためでたい結婚とともに夫は俳優を廃業。生活費は基本的に妻の資産。何しろお金だけはたっぷりある妻。その妻の道楽を支え、奔走する夫。これまた見た目も振る舞いも優雅な英国紳士。

妻は実は病気を患っていて、ふたりの間に夫婦生活はない。夫の別宅(妾宅)の家賃だって妻の資産からお支払い。

いや~もう、ここまで聞いただけでも、金目当てに資産家の未亡人と結婚したヒモ男しか思い浮かばないでしょ。いつものヒュー様にぴったし!・・・と思ったところが・・・。

これが、ぜんっぜん違っていたのです。

バニー♥ホワイティ♥と呼び合う二人はうさぎちゃん、気分は少年少女のまま。少なくともお嬢様の妻は完全に少女のまま。

妻は音楽が大好き。ピアノの先生をやってたこともあるけども病気のせいでこれも断念。音楽への情熱だけは人一倍負けない。ただ、情熱と才能は別の問題。

高名な指揮者のレッスンを受け、専属ピアニストも雇い、オペラの練習。段取りをするのがこの夫。妻のランチ会、リサイタル、これもすべて夫が手配して完璧に仕上げる。妻の幸せのために。これが、もう、ただのご機嫌取りレベルではないのです。

妻のリサイタルに来る観客は厳選、もちろん各種新聞記者も呼び記事を書かせる。目的は妻を喜ばせること、ただそれだけ。常に目を光らせ、妻によからぬ影響を与えそうな人がいたなら即にこやかに威圧的に紳士然と排除、もしくは優雅に買収。
この夫の活躍っぷり、敏腕ぶりはただものではなく、そこらのスパイも顔負け。この活躍っぷりに妻への愛が真実なのがありありとわかります。

笑みをたたえて、敵をも買収する姿はかつてのソロさんを彷彿と・・・・!
とってもチャーミングな英国紳士。その笑みと語りでまわりもうまく丸め込み、皆妻フローレンス劇場要員として動かされてしまいます。

うら若いピアニスト、恥をかくのも承知でフローレンスに付き合う決心が付くのは、妻の天真爛漫なお嬢様っぷりよりもむしろ夫ベイフィールドの献身ぶりにほだされたからでしょう。この若いピアニストをおだて上げ、ちょちょっと脅し、しっかりと自分の味方に取り入れてしまう手腕は大したもの。

資産目当てのヒモのようにも思えた夫のヒュー様、実はチャーミングなスパイの要素をすべて持っているのです。






妻も公認(?)の愛人薬はミッション・インポッシブル ローグネイション最大の目玉の女スパイ、イルサ役のレベッカ・ファーガソン。なんかこれってアンジェリークとソロさんっぽいかな?(うるっと涙)

新ウェイバリー課長大活躍!のようなこのショット。

←ちょっと素敵じゃありません?? 
ツイードのジャケットに胸ポケットにハンカチ。
もう課長そのもの!

これがコードネームアンクル続編の1ショットとかだったなら・・・・(きっと感涙)!




いざとなったらダンスだってお手のもの!
年だと年だといいながら、軽やかにステップを踏み、美女(ちょっと下品なおねーさんだけど)だって軽々と抱き上げちゃう。

おお、まさにあの The Deep Six Affair 「アンクルマンに明日はない)でウェイバリー課長が語った優秀なスパイソロさんそのものじゃない!

そう、コードネームアンクルの時にはそこまでピント来ていたわけではなかったけど、こんなに新ウェイバリー課長としてふさわしい人っていないじゃない(うるうる)


この感じなら、完璧な英国紳士、完璧なスパイとしてコリンファース演じるハリーハートにだって十二分に張り合えます。このふたり、実は誕生日が一日違いの同い年。アナザーカントリー世代。
アンクルエージェントは世界を救うために命かけて奔走しますが、このシンクレア・ベイフィールドは妻を守るために、妻を喜ばせるために命を懸けて奔走するのです。妻を守るためなら、どんなことでも優雅に笑みをたたえて(まさしくスタイルをもって)成し遂げてしまうのです。

いや、そんな過去がウェイバリー課長に会っても素敵だな~と妻に先立たれてから、対象が世界になった…なんて過去があってもいいのでは?と妄想妄想。

昔のウェイバリー課長だってほんとはとっても優しい人。私はあの、The Concrete Overcoat Affairでイリヤが拉致されてるスラッシュ基地の小島を○○時間後に爆破すると聞かされて、異を唱えるソロさん。そんなソロさんを叱り飛ばしながら、あと○○時間だ、コーヒー飲んでる間なんかないぞと暗に救出許可を出してあげる課長。そそくさと踵を返して出ていくソロさんに背を向けながら課長が独り言。

Alexander Waverly, the sentimental grandmother of the year

「アレクサンダー・ウェイバリー 本年のセンチメンタルおばあちゃん賞」と部下に冷徹になり切れない自分を自嘲気味にいう課長に惚れました。

衛星劇場の字幕放映を録画された方!ぜひ見直してみてください。(字幕版見てないので字幕が↑の通りとは限りません)

ああ、課長までもこんなにアンクル引き継いでいってくれるのに完璧だっていうのに・・・!

コードネームアンクル続編の夢が、足音さえ聞こえないほどまだまだ遠いのが切ないっ!
今年こそ、ファンフィクファンアートの増加以上の進展があることを切に望みます。 







2017年1月15日日曜日

クエンティン・タランティーノ監督のパパも映画人だった!


新年早々、お馴染みishisan のアンクル情報だったのですが・・・

私はいまだに未見のままのアンクルの女、スファニーパワーズ女史がロバートワグナーと共演するプリズムPrismという映画のご案内。2017年配給予定映画、日本に来るのはどうかも怪しいのですが・・・なんとコレ、脚本も監督も平素私たちがタラちゃんと呼んでいるクエンティン・タランティーノ監督のパパだったのでした。

びっくり!

 
似てるような似てないような・・・?
われらがタラちゃん、クエンティン・タランティーノは映画オタクが高じて文才を発揮した雄!のイメージだったので、そんな親も映画関係者なんて由緒正しいお血筋だったとは!とちょっと驚きました。

レザヴォアドッグスは衝撃でしたしね。



ところが・・・タラちゃん、お父さんとはめちゃ仲悪そう・・・そもそも親の離婚後まったく疎遠になっていた苗字が同じなだけの他人の様相。

こんな記事見つけました。ちょうど一年前のガーディアンです。記事の概要はというと・・・

件の新作プリズム(一年前にこんな記事出てた割にはまだ撮影終了してないようです)の収益の10%をロスの警察に寄付するとパパが表明したのです。 で、その理由が・・・・

息子クエンティンが、警官の暴行とかを「殺人だ!」と非難したことへの詫びなのだそうです。

へ???って思いますよね。

何でもタラちゃんが2015年NYで警官のひどい暴行事件に対してデモが起きた時、そのデモをサポート、支持のスピーチをしたことに、パパは激怒したそうなのです。親戚には警官もおり、皆秩序のために働いている。クエンティンは無知だと。

実際タラちゃんのスピーチのせいでヘイトフルエイトは警官にボイコットされたそうです。

タラちゃんも、当然パパのことなんてよく思ってません。

タラちゃんは堂々と、「自分に父親はいなかったし、父親のことなんて全く知らなかった。僕と同じ苗字だから今俳優で来てるやつじゃないか」と語っています。

ちょっと笑ってしまうのですが、このガーディアン記事、昨年1/27に発行され、翌1/28に訂正記事をだしているのです。その理由は、この映画の記載について誤りがあったと、トニー・タランティーノ氏のエージェントよりクレームがあったからと、トニー氏は1960年、クエンティンタランティーノが生まれる前にも映画出演していた…というものでした。

なんか大人げないパパですねぇ・・・タラちゃんに同情しちゃいます。
パパのトニー・タランティーノ氏、息子が大成したのをちゃっかり利用してる感たっぷりなのはザンネンですね・・・。

そしてこのパパはどういう人なのかとちょっと調べてみたのですが、日本語ウィキはありません。英語版はありますが、たいして何も載ってません。そして映画関係者情報ならこちら!のIMDBなのですが・・・これによると素晴らしい経歴なのです。

ちゃちゃっとまとめると・・・何でもトニー・タランティーノは親も俳優(30年代にウェスタン映画にたくさん出演)であったため映画や音楽に昔から傾倒、ドラマスクール卒業後、多くのスキルを身に付けた。馬の扱いやマーシャルアート(武術)にもたけ、パイロットのライセンスも持っていた。そして英語だけでなく、スペイン語とフランス語も流暢なのだと。

ところがですね・・・このIMDBのコンテンツがタランティーのプロダクションという、どう見てもパパの事務所らしいとこが書いてるんですよね・・・自作自演の様相。

ちなみにパパの出演作、メディタレニアン・ブルーという映画がなぜかツタヤディスカスでも借りれます。そしてすでにレビューなさっている強者が!
こちらです。

こちらのレビューを参考にすると、スペイン語圏の映画なのに英語なのは、トニー氏が英語しかしゃべれないから合わせてあげたのでは?とのこと。 

なんか大ぼら吹きですねぇ。

一瞬、Imdbでタラちゃんの語学コンプレックス(あると私は見ています)はここからか?とおもったのですが、パパはそれを察知してわざと大ぼら吹いてるみたい。 タラちゃんはおそらくシンママにそれほど裕福でもない家庭で育てられたんでしょうけど、厭味ったらしく優雅な、嘘かほんとかわからに経歴といい・・・感じわる―い!

プリズムも見たい気はあるし、このメディタレニアンブルーも借りて観たい気もしますが、なんだかそれもパパトニー氏の策略にのっかるようでちょっと躊躇しちゃうなぁ。

プリズムのトレーラー(2013年?)がありました。



この動画ユーチューブで見ると続きのようにパパ、トニー氏の出演作が上がってきます。
ですが・・・やっぱ評判悪そうですね、どれも。

パパの方はあまり俳優向けでもなさそうです。

タラちゃん、こんなパパは無視無視!めげずに我が道を行ってね!
どう見たって…才能が全然違ってますよね。(ってパパの映画はまだ見てないけど)

衝撃のレザボアドッグス、お金がなくて売っぱらっちゃった、トゥルーロマンスにナチュラルボーンキラーズ。どれも素晴らしかったです。

タラちゃんは脚本家としても監督としてもデビュー当時から突出した才能に溢れてたのは明らか。
こんなパパに負けるなー!!

ベルリン天使の詩 Pas Attendre探して彷徨ったあの日

30年前への懐古がとまらない・・・!

ベルリン天使の詩、やっと監督コメンタリーも見ました。続編「時の翼を超えて」はいまだどれを選ぶが思案中。
初版以降出てないのか結構高額なのばかり。ならいっそヴェンダースコレクションで入ってるのを買うべきかと思えど、これがまた、BDは欧州盤でうちでは見れないのだけ。DVDの仕様がPALなのはよくても、字幕はどうついてるのか不明。価格は個人的許容範囲外だし・・・。

誰に見えてるんだろう?カラー版カシエル。天使像はセンスいまいちと思うけど
ところで、ベルリン天使の詩を語る上でもうひとつ、忘れられないことが有ります。

ベルリン天使の詩がツボ過ぎるのはひとつはヴェンダース監督の挿入歌の選曲です。○十年前のパンク少女にはこの上なく効果的。音楽だけで★3つくらいかさ増ししちゃったかもしれません。
(みんな結構この映画は寝ちゃったとかいうんですよね・・・・)

とはいえその当時はまだレコードが主流だったし、ネットも存在しない時代でした。ヴェンダース監督によって知らなかったけど紹介されたようなのもあります。日本盤、当然ありません。

ミニマルコンパクトなんかはLP借りてきてカセットテープに録音した記憶があります。そうよ!私はラジカセで音楽を聴いていた世代。

ベルリン天使の詩サントラ挿入曲でとっても気に入ったのが、冒頭、ロックしか知らない誰ぞの孫がガンガンかけていた曲。同じ曲はサーカス解体の時にも空き地でマリオンが流して聴いていました。カシエルが耳ふさいで音が止まるアレです。

メタルパーカッションの音とロバートスミス級に泣き声チックなパザドンパザドンという声(と聴こえたのよ) フランス語だということくらいは理解したけど全く知らない曲。

2回目に映画館に行ったときにエンドロールを目を凝らして、誰の曲か知ろうとしてました。おそらく当時はパンフレットは買ったと思うけど、そこまでのせてくれてません。そして…覚えて帰ったバンド名(というか言葉)がAus den Sprung。

私の守備範囲内(関西)の国内輸入レコード屋では見つけることならず、その数年後、ドイツで探しました。ハンブルグのいっちばんでかいミッシェルというレコード屋さん。今でもあります。

ここでこの(私の思い込んでた)バンド名を告げ、ないか訊いたのですが・・・。

店のお兄さん「う~~ん知らないなぁ。Sprung aus den Wolken なら知ってるけど、それじゃないの?」
私「うん、それじゃなくてAus den Sprung」

とそこで会話は終わり、このパザドンはあきらめることとなりました。この件、ここでのレビューにも書いてました。私のおつむの中が○十年変わっていないという点にはちょっと愕然としてしまいますが・・・。

そこからうんと時が過ぎ、今世紀に入り、ネットでなんでも調べられるようになったとき、やっと見つけました。このパザドンパザドン。最初に巡り合ったのがおそらくコレ↓


私の記憶違いであの兄さんが言っていたSprung aus den Wolken が正しかったのだと知ったときの衝撃。

あの時にそれじゃないと言い切らずにベルリン天使の詩でかかっていた曲といえばよかったのにーーーーー!

おまけにこのバンド、なんとノイバウテンの当時はギタリスト、一番の若造だったアレクサンダー・ハッケ(あの、クリスチーネ・Fの元カレ)まで参加してたバンドだったとは!そんなこと20年前に知っていたかったと痛切に思いました。

音がもっといいのはコレ!たぶん、サントラのトラックそのまま・・・。


そして今回早稲田松竹でこんな張り紙…というか昔の記事のコピーだと思うのですが、有りました。 2枚目の写真この曲とこのバンドのことが書かれています。



っこれって何の雑誌だったのでしょうね? 少なくとも少女時代の私は遭遇しませんでした。

この雑誌を読んでたら、国内で見つけられなくても、ミッシェルではレコードゲットで来てたはずですよね。 いや、ないものねだり的に探すのが日常化していたから、ないと言われて、そうかーと思ってしまったけど、ドイツでもないなんておかしい!と食い下がればよかったのに・・・。

ノイバウテンだって大好きで結構映像だって持ち合わせてたりするのに、アレックスのノイバウテン外活動にまで気をまわしていなかった私。おおバカです。たまにオタク根性だけじゃすり抜けてしまうものがあるのです!

こうやって再会したパザドンパザドンをひしを噛みしめて聞く私。(パ・アテンドルは違いすぎません?Pas Attendre, リエゾンってのがあるので、Pasの最後のsとAttendreの母音のaがくっ付いてsの濁音になるはずだし。)

でもやっぱり最後は教祖様!このThe Carny のライヴ映像素敵です。ここにコメント書いている人がニックケイヴだけが醸し出せる荒々しい美しさって絶賛してるのですが、100%同感です。
キット誰も同じようにカバーできないんじゃない?(やった人いるのだろうか?) 短調のワルツに合わせて踊る教祖ニック・ケイヴ、とても素敵です。やっぱ〆はこういうのがふさわしいわ♡

2017年1月13日金曜日

ベルリン天使の詩 実はこれもカシエルが主人公だった?

なんだか随分怠慢こいてしまいましたが、本年もよろしくお願いいたします。


お正月が明けて1/7-1/13の一週間だけ、ヴィム・ヴェンダース特集のように早稲田松竹が「ベルリン天使の詩」と「パリ、テキサス」を2本立てで上映してくれてます。

ええ、もちろん観に行きましたとも!そして本日ベルリン天使の詩だけ、野暮用で会社を休むことになったので、もう一回観に行きました。(早稲田松竹はレディースディやっていないのですね)

私、この映画はヴェンダース監督が私のために作ってくれたのではと観るたびに思ってしまいます。私モノクロ大好きです。そしてこの80年代のベルリンと音楽。吸血鬼ならぬとも孤独に永遠の時をさまよい続ける霊(天使たち)…あり得ないほどドストライクにツボです。

聴感覚優位人間の私にはブルーノ・ガンツのAls das Kind das kind war と始まるペーター・ハントケの詩の音にうっとり。ブルーノ・ガンツもいい声しています。エレニの帰郷見た時も思ったけど。

余談ですが、今回パリ、テキサスも○十年ぶりに再見、主人公トラヴィスの声にも聴き惚れました。ヴェンダース監督、声で俳優選んでたりする?

そして私は静かに人々を見続けていたカシエルが大好きでした。演じていたのは故オットー・ザンダー。



この映画を観た後、この方の出演作品いくつか漁ってみました。

ほとんどが口髭のあるおじさんでした。「ドイツの恋」とか、なんと全編フランス語でしゃべってました。

ブリキの太鼓にも出ていたようですが、思い出せません。もう一回見なきゃね。でもあの愛読書だったブリキの太鼓に出ていたなんて因縁を感じてしまいます。




このシーン↓なんて涙が出そうなほど好きです。だって、だって、御髪ふさふさの教祖様(ニック・ケイヴ)に衝撃の初来日コンサート時と変わらぬブリクサ(左後ろ、あの頃はステージ衣装がいっつもこれ)、そしてカシエルです。このあと、From Her to Eternityが演奏されます。


昔VHSも持っていましたが、数年前BDも購入。VHSの時は確か本編のみでしたが、BDは未公開映像も含め盛りだくさんの特典付き♥

ヴェンダース監督のコメンタリーまでもあるものの、そこまでまだ手を出せてなかったのですが・・・どうやら、コメンタリーにはコロンボ、ピーター・フォークも参加してる様子。それって凄すぎる。ちゃんと見なきゃだわ。

実はこの映画、今や主要キャストがブルーノ・ガンツ以外皆鬼籍に入っています。そりゃ荒野の七人のように50年以上前の映画ならそれも納得ですが、まだやっと30年ほどの映画なのにですよ。

天使ダミエルが惚れるブランコ乗りを演じていたゾルヴェイク・ドマルタン、当時の監督の恋人ですが、彼女は40代半ばで急逝。そもそも90歳近かったクルト・ボワはもちろん、ピーター・フォークも、オットー・ザンダーも亡くなりました。そしてこの映画で象徴的だったベルリンの壁は映画が出てから2年ほどで崩壊しました。

もう、歴史の様相ですね。どうとらえていいのやら当惑してしまいます。

ブルーノ・ガンツの声も好きですが、私はずっとカシエルが好きでした。本編でのカシエルは淡々としていました。相方ダミエルが熱いのに比べて、クールな印象です。見た目も大きな黒い瞳、南方系を思わせるダミエルに比べると色が薄く、冷淡な感じにも見えます。

カシエルは飛び降り自殺をしようとしている男に寄り添うのですが・・・男は飛び降りてしまいます。

その瞬間、Nein!と叫んだカシエル。

カシエルは男を死なせたくなかったのです。

(どーでもいい話ですが、この自殺男のセリフの字幕が意味逆になっているのに今回気づきました。自殺男は飛ぶ前にさぁ、飛ぶぞとWarum nicht?(なぜいけない?)と言っていたのに、字幕は「でもなぜ」となってました。この自殺男はなぜ自分が死なないといけないのかと思っていたわけではなく、生きる意味など全く見失い、死なない理由がなかったのです。) 英語字幕付きの動画見っけ。でもこっちもWhyだけになってますね。

その後カシエルも同じようにもっと高い銅像のてっぺんから落下してみます。走馬灯のように、カシエルがずっと見続けてきた人々の悲しい歴史が蘇ります。戦争に空襲。

このシーンにカシエルの隠れたやさしさ、暖かさを垣間見たようで、そしてただただ、人々の辛い歴史を傍観するしかないカシエルの寂しさ、哀しさが凝縮されているようで、とてもカシエルが好きになったのです。そして、カシエルはそのまま、霊としての生をあるがままを受け入れ、ストイックに永遠に孤独に歴史を見守り続けるのかと思っていました。

なので数年後に続編、Far Away, So Close(時の翼をこえて)が出たとき、カシエルが突然人間になる…というさわりだけで、断固拒否してしまいました。 霊として孤独に、無力感に苛まされても、静かに人々を見続けるカシエルが好きだったのです。

当時、在英中でしたが、その時の評判はケチョンケチョンだったと記憶しています。Sight & Soundなんかでもこき下ろされていました。なので余計に・・・観ませんでした。ナスターシャ・キンスキーが出ていようが、拒否してしまいました。でも、今Imdbの評価を見るとそんな低くもないのです。

そしてBDの特典でヴェンダース監督、信じられないことに、公開当時の本編からは想像もつかないことを話しています。実は人間になりたくてなりたくてしょうがなかったのはカシエルだった。そしてカシエルもダミエルに続いて人間になって終わるはずで撮影までしてあったのを、結局天使のままにしておいたのだと。

確かに・・・カットされた未公開シーンを見ると、カシエルはひょうきんもの。見えないのをいいことに、パントマイムよろしく、ヒトの物まねしまくり、写真の中にはちゃっかり入る(どうせ映らないので)
件の自殺男が飛んだあと、男を止められなかったことに憤っているカシエル。えらい熱いヤツなのです。

意外過ぎました。 私は静かに哀しみを秘めたカシエルが好きだったので。

そして何より、実はコンサートホールで人間になって鎧を床に置き、愛を語り合うマリオンとダミエルのお邪魔虫を堂々とやっちゃうカシエル。

さらっさらの長い金髪をかきあげるカシエルがとっても素敵なのです。

これを観た瞬間、食わず嫌いのように20年も続編を徹底的にスルーし続けた自分を呪いました。ただ、やっぱり、いろんなところで見聞きするあらすじ・・・ではあまり興味はそそられないのですが、このさらさら髪のオットー・ザンダーはとっても素敵!

とご本人が亡くなってから痛切に観たいみたいと願っちゃうところがほんとバカバカバカ!と壁に頭くらい打ち付けたいくらいの気分に。

今回、このヴェンダース監督の話を念頭に置いて本編を見ると…実は主役はダミエルじゃなくってカシエルだったの?と思えてきました。つまり、霊として生きてきた歴史の語り部はすべてカシエル。ダミエルは恋に目がくらんでマリオンしか見てません。そして、何を語るわけでもないのに、カシエルの表情だけ映しているシーン、ダミエルがマリオンを見つめているシーンよりも多いのです。

そしてちゃんと伏線は張られていたことにも気づきました。 元天使だったピーター・フォーク。(この設定もとっても粋だと思いません?) 

適当に「見えないけどいるのはわかっている」と怪しいオッサンよろしくぶつぶつ言ってるだけかと思ってたのですが、ちゃんとダミエルに話しかけ、カシエルに話しかけ、そして、人間になったダミエルに、「もっと背が高いかと思っていた」ってカシエルと混同してるんじゃん!

ニック・ケイヴのライヴの最中に壁に頭をつけているカシエル。このシーンがカシエルが人間になりたいと願い、迷い、苦悩している姿なのだと理解しました。

未公開シーンには監督自身が「なんでこれを省いたかみんな納得するだろう?映画監督ってバカなことするんだよ」というそのシーンは確かに入れられんわな…という不可解なもの。これがエンディングではそれまでの美しい映画がぶっ潰されてしまいます。

でも、「天使が人間に恋をして人になるまで・・・」の話を「ふたりの天使が人間になるまで」の話にしてもオッケーだったような気がします。そんな数年後の壁が崩れてから突然カシエル人間になるくらいなら。

カシエルとダミエルの双方が人間になっての再会だって面白いです。それまで無かった体があり、お互いペタペタ面白そうに触っている姿はかわいい。

地上に水が流れ始める前から霊として存在していた二人。自分たちに似た姿の人間が登場し、言葉を話したのでマネして会話をすることを覚えた二人。ずっとそばにいたダミエルが人間になり、自分がいることさえ、気づかせられない状況にカシエルが即、後を追っても不思議はありません。(だって元の話はそうだった)

だってやっぱりみんな一人ぼっちではいれません。ポーの一族、吸血鬼エドガーはメリーベルを仲間に入れ、そのことに苦しみながらもメリーベルが死んだら代替のようにアランを身内にしてしまう。アランが死んだら自分も生き続けることを拒否、火に撒かれて死んじゃいます。

ハンガーのミリアムだって、永遠の命はあるけども、数百年ごとに新たな愛人を身内にして次の数百年をともにし続けていました。

霊だって一人ではいれないのです。

そして再会してお互いをペタペタ触り合う元天使二人(マリオンはヨコに置き)はまるで、美女よりもイリヤを優先してかまっていたソロさん・・・のナポソロコンビもちょっと思いだしました。

続編スルーし続けた私ってほんとバカ!今見たいと思っても、レンタルもない、BDはリージョン2オンリー。理解できる字幕付きDVDをゲットできるのかイマイチ怪しい状況。反省することしきりです。

おまけに教祖様ったら続編にもちゃんと曲書いてたのね。カシエルの歌なんてある・・・・



うーーん、これならFrom Her to Eternity, the Carnyの方が絶対好きではあるけども・・・
これからアマゾン総ざらいでFar Away So Close観てやるわ!