2011年5月28日土曜日

ちょっと驚きの発見 吹替え版 フィッツで・・・。

Best Boys 心理探偵フィッツ 『悲しい出会い』
前世紀に終盤の15分程だけを観た時の記憶。 

ゲイリー・シニーズ似のヒゲ男が相方の説得、フィッツに唆されて、涙ながらに愛を訴える。 
相方は銃を手に、自分より大柄な女と子供を人質にしている、もやし少年。 
ヒゲ男の迫力に、どう反応していいんだか、居心地の悪さを感じているうちに、
もやし少年がスナイパーに射殺されてしまった。 
なんでこんな子供が射殺されるんだよーっ!!とショックが大きく、それっきり蓋をしてしまった。

数年後、ジョン・シム(John  Simm)を見かけて『少年!生きていたのね(あたりまえだよ)』とすごく安堵した。 
ヒゲ男のフレーズもしっかりと覚えていた。 よっぽどインパクトが強かったんだろうな。

ヒゲ男…なんて身も蓋も無い言い方をしてるが、このBest Boys でグレイディ演じる
リアム・カニンガム(Liam Cunningham) この上なく素晴らしい。
再放送時、その迫力と表情の動きから目が離せなかった。 
特に後半、すごすぎて、体が震えてしまった。 彼が演じるグレイディには惚れたよ。 なんていい男なのだろう。

フィッツの数あるエピの中で、もっと深い話はあると思うが、各エピでの登場人物のなかで
この二人が一番哀しく切ない。 最後の悲痛さに脚本家を心底恨んだ。

そしてこのエピは、同時進行で進んでいるフィッツ一家のストーリーも相まって、どこかフェミニスト映画のような感じ。 
体の奥からふつふつとした静かな怒りが湧き上がってくる感触だ。

それはさておき、吹替版でも同じくらい感情移入できるものなのだろうか? 
この表情豊かな二人はどんな感じになるの?

声優さんはまず登場人物の声を作る。その声を維持したまま、トーンを替えるのは難しいのだろう。 
私の職場の電話応対の声と、子供を叱りとばす声が、全くの別人でも構わないが、
声優さんはキャラの声を維持しなければならない。

グレイディの声は終盤の泣きの入ったところに合わせたのだろうか? 
最初から恐い顔とはちぐはぐ感がある。 怒鳴りに迫力がない。 ケンカで軍を除隊になった男と言うにはピンと来ない。 
むしろ、『蜘蛛女のキス』のウィリアム・ハートを思い出した。

もやし少年、ビルは、ジョン・シムが驚異的に幼く演じている。 声やしゃべり方がかなり子供っぽい。 
そのせいで17歳どころか15-16にしか見えない。あの感じなら女の声優さんでもいいんじゃないかと
思うくらいだが、それはダメか。
吹替の声は・・・なんか、すれっからしでふてぶてしい。 これはちょっと残念すぎる。
吹替え版ペンハリガンがいつも女教師みたいなのも、ずっと残念だと思っていたが、これはそれ以上に・・・・だ。

吹替版は意外と異訳も省略も多く(なぜ?)、数ヶ月前に観た字幕版の方がよほど原語に忠実だったぞ。 
おまけに、いかめしいナレーションが【あらすじ】を決めつけている。 
そして何気にいろいろなシーンが細切れにカットされていることに気がついた。 
それも『この表情がいいよね~』と(勝手に)思っていたようなところがかなり。 ナレーションを追加したから?

このエピに関しては私はかなりマニアックだ。 
グレイディに惚れこんだのと、ジョン・シムの愛くるしさ(成人とは思えん)にあてられ、何度も観ている。 
書き起こしぐらい出来そうな勢いだ。

この話、ベスト・ゲイ・ラブストーリーと称されることもあるものの、この点(ゲイ)に関しては
ビミョーなまま放置されている。 字幕版だってそのままだ(ったと思う)。 

ところが吹替版は、最初っから、ゲイの少年が、グレイディの『隠された資質』を嗅ぎ付け、
寄ってきているような感じだ。 
何かで『ジョン・シムとおホモだちの話』と一言で片づけてあるのを見て、むっとしたことがあるが、
吹替版視聴者なら、それも有りかも…と思った。

これはちょっともったいない。 吹替え版って、もっとオリジナルに忠実なものではなかったの?
それに何より、セリフにさほど差異はなくとも、語り口が全く違うシーンもある。 何故??

例えば、グレイディがやけどを負ったビルを病院に担ぎ込んだ時、グレイディは父親然として
事の顛末(ウソだけど)を丁寧に医師に説明していた。 
親子のフリというのは訳あり年の差カップルがよく使う手だ。ゲイも例外ではない。

吹替え版ではただ、カリカリして不躾な男だ。言葉づかいも荒い。 
遠い昔にTVで観た『狼たちの午後(吹替)』を思い出した。 アル・パチーノが出ていた、
ゲイの男が恋人の性転換手術費を稼ぐために、銀行強盗をする話。 
こういう感じ、吹替版制作用、ゲイの男の基本イメージなのだろうか? 
マニュアルでもあるの? 実際に遭遇したことはないけど、「○○あるよ」と話すのは中国人…みたいな感じで。

私が子供の頃、TVで観る洋画は必ず吹替版だった。 ずっと日本語にかえてあるだけだと思っていた。 
吹替版を観なくなって久しい。 昔見た映画もやっぱ、オリジナルとは違っていたのだろうか? 
そもそも、原版と吹替版の両方を見るというのがイレギュラーなのだけど、
吹替えだから話が違う・・・てわけには行かないはず。

私が子供のころTVでみてそれっきりの映画は、一度見直さなきゃいけない…と思い始めてきた。 

4 件のコメント:

  1. 古い所へ失礼します。
    このエピソードを字幕無しで観てみたものの難解で(~_~;)
    詳しいあらすじを求めていてたどり着きました。

    ちょうど、昨日 State of Play(BBC版)を観たあとに吹替えへの衝撃でツイートしまくってたので、同じような疑問が書かれていての嬉しさと、このドラマもそうなんだ・・・とがっかり感とでコメントさせていただきました。

    もう少しオリジナルに忠実にしてくれたら、日本語版でももっと人気が出たんじゃないかと思うと勿体無いですね。
    ツイートにもリンク貼らせて頂きます。
    宜しくお願いします。

    返信削除
    返信
    1. omayu 様 

      お立ち寄りとコメントありがとうございます。
      そうなんですよ~。どうして吹替えが、オリジナルに忠実でないのか非常に理解に苦しみます。ある意味、視聴者への裏切りですよねー。
      State of Playの吹替えは結局観たことないのですが(たぶん見ることもないと思います)やはり…なのですね。
      フィッツの『悲しい出会い』は涙なしでは見れません。ロミオとジュリエット級の悲恋の物語だと私は評価しているのですが…吹替えは全くベツモノでしたねぇ。

      削除
  2. お書きになられてる病院での説明シーン、言っていることが分からなくても口調と表情から落ち着いているふりを装って説明している感じを受けました。それが不躾にカリカリ口調になちゃうんですねー。
    ゲイの資質に関しては本人に自覚なしの印象だったのに、利用してる設定とは・・・(-_-;)

    もし本来のドラマが楽しみたかったら、例え言葉が全く分からなくても吹替えで観るべきじゃないですねぇ。
    State of Playは1話を吹替えで観てみたら、余りに違うのでどこまで違うのか知りたくて最後まで観たのですが、人物像が別人に感じるので感想も変わってしまうと思いました。
    ついでにUK版DVDからのカットシーンは人物像が深まるシーンが多かった。

    UKもの、面白いのに日本ではDVDも手に入らなくなるの何でだろう?と思っていたのですが、吹替えのせいで別のドラマになってて魅力が伝わらないからだと言う気がしてきました。
    人物描写とか地味な部分にこそ面白さがある分、派手な印象のアメリカ物に比べて吹替えで台無しにされる(言っちゃいました^^;)確立が高いんでしょうねぇ。

    返信削除
    返信
    1. omayu 様

      再来訪ありがとうございます!

      >例え言葉が全く分からなくても吹替えで観るべきじゃないですねぇ。
       
      ホントにそうだと思います。どうも吹替え版制作班は日本人に分かりやすい話にしようとするみたいで、(だから原作を超えた吹替え版!なんて訳のわからん宣伝文句が出るんですよね)そんなお気づかい結構です!って私なんか思いますが。
      子供の頃に吹替えで見た映画を大人になって原語で見て、こんな話だったっけ?と思っても、昔過ぎて覚えてないだけだと思ってましたが、そうじゃないのかもしれません。

      どんなに吹替えの訳がよかったとしても、それでも、やっぱり声優さんの吹替え用演技じゃないですか。感情移入度がやっぱり違いすぎて、原語で見てたら、思いっ切り惹きこまれるようなとこでも、平坦で全然印象が違う…なんて良くありますよ。
      ってそれほど吹替えたくさん見てなくても思うくらいなので、やはり、全部そうだろうなーと思ってます。

      最近のDVDは結構、正確な英字幕付けるのが標準なので(難聴の人のため)そっち入手して英語の勉強くらいに思った方が映画ドラマ自体も本来の姿で楽しめて良いのではないでしょうか。

      削除