2012年4月12日木曜日

Sherlock S2 Ep3  『夜叉』の双子のようなふたり。


リピート観…いや、ついつい流しっぱなしにしてしまう、シャーロック。(といっても忙し過ぎて、このところご無沙汰)
S2もやはり、感情的な盛り上がりは1話、3話が高い。 S2 2話にあたるBaskervilleは単体で映画に
してしまっていいのでは?と思うくらい出来はいいのよ。 スケールもデカイ。
でも感情的に揺さぶられるのは1話と3話。これはS1もそうだった。

3話にあたるRaichenbach Fall.  言うまでもなく、ストーカーと化したジム・モリアーティが絶好調なのだけど、ミステリー的な謎解き以上に、狂人モリアーティの言動にこっちの脳内もかなり振り回されてしまいました。 
またまたモリアーティ演じるアンドリュー・スコット(Andrew Scott)のイカレぶりが半端じゃなくって。 コワすぎます。

ストーカー モリアーティがどのようにシャーロックを追い詰めて行くかはさておいて、彼の言動は謎がいっぱい。
モリアーティの不気味なシャーロックへの執着、この二人だけが理解、解読できる数々の謎解き、
『夜叉』(吉田秋生著)という少女マンガの主人公の双子を思い出してしまった。

『夜叉』は遺伝子操作によって、それもたまたま実験中にうまく残った受精卵から生まれた双子が主人公の話。
この双子は遺伝子操作でできた、次世代人種、普通の人間より、身体能力、脳の情報処理能力、可聴域など、ずっと幅が広く、通常の人とは見えている世界が違う。つまり、一般のヒトに見えている世界とこの二人に見える世界はベツモノ。

シャーロックとモリアーティ。 非凡なる頭脳を持ち合わせ、対決する二人に、この『夜叉』の双子、静と凛が重なってしまった。 どちらのペアも、暗号解析などお手の物。その気になればハッキングで核のボタンだって押せる。 二人だけに通じるものがあり、 一方はエンジェル(善人)と共に歩むことを選び、もう一方は悪魔に魂売ったかのような冷酷な悪人。
日本の漫画は昨今、人気だけど、ちょちょっと調べたところ、英語版は発行されていないようだ。作者の吉田秋生氏は英語のマンガサイトでじっくりと紹介されているが。

なので、シャーロックとモリアーティの関わりにおいて、このマンガは全く無関係である。(トーゼンよね)

だけど、モリアーティのセリフと双子のひとり、凛の言い分と何と似ていることか。 そしてモリアーティ(Demon)とシャーロック(Angel)。凛(夜叉)と静(菩薩)。 どちらも同スペックの超人類でありながら、対照的な生き方。

静と凛は人工的に作られた超人類。 静は、12歳で拉致されるまで、仮母体の産みの母に愛情深く育てられ、明るい友達に囲まれて育ったが、6か月遅れで生まれた弟の凛は生まれた時から冷酷な研究者の養父に超人類としての能力を最大限に行かす教育を受け、虐待されて育った。

超人類の上に双子の彼らは互いに感応性があり、一方の目を通して、同じものを見ることもできる。 凛は幼いころから静の存在を知っていた。一方静は弟の存在を18歳で日本に戻って初めて知った。 虐待されていた凛の静に対する対抗心、嫉妬、不条理感には胸が痛んだ。(最後には理解しあえるけど)

モリアーティのシャーロックへのゆがんだ執着。発端は、S1 EP3の20年近く前に水死したカール・パワーズ事件
らしいけど、そこから、露骨にモリアーティがからみ始めるまでの間の彼の一方的な葛藤(?)が詳しく説明されているわけではない。

ただ、シャーロックを死なせるために自らの命を絶つモリアーティに、ふと、モリアーティの積年の願いは
シャーロックを道連れにした無理心中だったのだろうかと思った。 

一連のモリアーティの言葉から推測。

モリアーティは幼少時より世間と人々を見下し、うんざりし続けてきた。馬鹿どもと一緒に生きているのはつまらない。
気に喰わないカール・パワーズは楽々と消したものの、退屈な下等人類と生きる意味も見つけられず、さっさと自殺しようと思っていた。 ところが・・・。
この世に未練は全くないのだが、ふと、自分と同様に特殊な人間が目に留まった。 カール・パワーズの死は事故ではないと警察にクレームをつけたガキ、シャーロックである。
超人は自分だけでないことに驚くとともに、こやつが本当に同様な超人なのかも確かめたくなった。
この世でこれほど突出して有能で特殊な人間は自分だけと思っていたのだから、同種の超人類と力比べもしてみたくなった。 この超人が本当に自分と同様の超人かも確認したい。
そして、シャーロックがモリアーティのこの世への唯一の、未練となり彼は自死をやめた。おそらく、シャーロックに目をとめた時、モリアーティは高層ビル(空襲されたあとに、戦後建設された高層のカウンシルフラットね、uglyな)の上から、飛び降りる寸前であった。

これがモリアーティの言う、I owe you a fall なのだろう。 

バカらしいと思いながら生きることにしたモリアーティ。 超人の自分がこの下等人類の世で生き続けることが問題なのだ。 
密かにシャーロックにちょっかいをかけるのが唯一の生きがいとなった。ちょっかいをかけているうちに同じ異端児/超人シャーロックと自分の境遇の違いに釈然としないものも感じるようになった。
推測するにモリアーティは、やや貧しい家庭で、親には虐待、もしくはネグレクトされてきた。
親も普通でなく可愛げのない、ジム(モリアーティ)を持て余して放置した。
反面、シャーロックは異端児とはいえ、とてつもなく裕福なアッパークラスのお坊ちゃんであり、過干渉だが、愛情にあふれた親と理解者たる兄がいた。何という不条理。 それでもシャーロックも頭脳を持て余し、孤立している。やはり同志。

世の中には賢くなくとも悪人は多い。悪人どもの犯罪に力を貸したら、ひと財産などあっという間にできた。何のことはない、ヒトから金を貰わなくとも、自分の金を作ることなど簡単。 経済力はすぐに入手した。経済力を元に人を操ることも簡単にできた。ゲームは常に自分が有利だった。何しろ自分は超越した人間なのだから。

シャーロックはいつ自分の存在に気がつくだろう? そのうちに気がついた。シャーロックが持っていて、自分にはないもの。
自分は常に孤立無援でカネと脅迫で武装している。シャーロックにはなぜか彼を慕う人間がいた。無償で。
それでもシャーロックは凡人は相手にしていなかった。兄弟仲も悪そう。 
ところが、シャーロックはまるで恋人のような無二の親友を見つけてしまった。 ジョンである。異端児シャーロックを素のまま受け入れ、理解し、崇めてまでいるではないか。おまけに社会性を身に着けさせようとし、それなりに功をなしている。明らかにシャーロックは以前より幸せそうであった。

つまらない。 何故お前は凡人に迎合するのか。 二人になって楽しそうなシャーロックを見るのは不快であった。 モリアーティはもうちょっと積極的にアピールすることにする。お前もこの世界のものではないはず…と。
モリアーティは人間的感情を弱さとみなし、見下してはいるが、自分と同じ異端児のはずのシャーロックが人間的関わりや幸せを手に入れるのを見るにつけ、侮蔑と共に嫉妬も湧いてきた。見込み違いだったのか?
シャーロックが見つけた親友は、奇特にも変人シャーロックを世間に認めさせ、名声を得るのに一役買っているでないか。自分は今まで、この超人能力を全て日陰で活用してきたというのに。

納得がいかなかった。裏切られた想いであった。
一方的に同志として抱いていた親愛の情は憎しみに変わった。シャーロックの全てを貶め、この世のものではないことを知らしめ、消し去りたくなった。シャーロックに唯一の生きる楽しみをもらったというのに。(これがしつこく登場するIOUだろう)
そしてモリアーティはただひとりの同志シャーロックと共に自分が属するわけではないこの世とおさらばしたかったのだ。
もともと歪んだ人間である。シャーロックをいたぶるのに手段は選ばなかった。今度はシャーロックをいかにダメージを与えて葬るかが自分が世を去るまでの生きがいとなった。
お前もこの世に属するものではないのだ。生きているべきではない。

モリアーティの仕掛けに対して、幸いシャーロックの方から、チャンスを作ってきた。二人の対面。
シャーロックに自死を選ぶように仕向けるモリアーティ。 でなければシャーロックの愛する友人たちが危険に合う。
人間的情をとって、自死するか、自己をとって友人を見殺しにするか。

ところがシャーロックは奇策を講じる。「俺はお前だ」「お前は自分を殺すのか」と。
そう、シャーロックにやっと気付いてももらえたのだ。 我々は同類なのだと。
もう思い残すことはない。 そして、モリアーティは死んでみせる。彼が死んだら、友人たちに仕向けられたヒットマンは任務を遂行するのみ。 結局シャーロックは死ぬ様を見せないといけなくなった。

この最終話で一番涙を誘うのは言うまでもなく、シャーロックに死なれた後のジョンである。(見てられないよ)

でも、ふと本筋それて、もう登場することのない、モリアーティの残した謎に気を取られているうちに思ったのだ。

モリアーティの死を悼む人は誰かいるのだろうか…と。 ジョンがシャーロックの死をこの上ない悲痛さで嘆くように。

『夜叉』の凛を常に見守っている幼馴染の番犬、タケルがいたように、ジム・モリアーティにもだれか本気で涙を流してくれる人がいてくれますように・・・と祈ってしまった。




2015.12.04  追記
なんと! 狂人モリアーティを演じたアンドリュー・スコット、SPECTRE(24本目の007映画)に登場します!(こちら

2 件のコメント:

  1. わー
    深い~~~@@
    う~ん・・・私はそこまで彫り下げて考えて無かったですハンセイ
    I owe you の意味がよくわからないでずっと考えてはいたのですが
    面倒で!@@;意味をあまりよくとってないのです;;
    1話で疲れちゃって><

    う~ん・・・
    そうかモリちゃんそんな感じしますね
    モリちゃんが納得して死んでいったとは思ってなかった^^;
    ヤバイなぁ・・・
    意味取り直さないと買ってまで見てる意味がないかもしれない><

    はぁ・・・勉強になりましたカンパイデス

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    1. エリア55さん、こんばんは! コメントありがとうございます。
      コレは私の感想…てことで(^_^;) 妄想もかなりはいってます。いつもながら。

      >モリちゃんが納得して死んでいったとは思ってなかった^^;

      あの脱力~の着信音Staying Alive が実は伏線?で、'Staying alive is the problem' と言っていたので、生きていたくないのね~と思ったのです。

      かわいそうなくらい歪んで複雑なオトコでしたね。孤独だし。
      演じたアンドリュースコットに脱帽です。
      ベネさんとは全然違う意味でスゴイと思いました。

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