2011年6月5日日曜日

タランティーノ節の華麗なるペテン師たち S4の謎。

Hustle(華麗なるペテン師たち)、S1からS6までのボックス買ったので、順次見ている。 一話完結なので、
就寝前にちょうどいい。 笑い転げながら、楽しく見れるので、精神衛生上にもとってもいい。
S1から、いいエンタメだな~♪と機嫌よく見てきた。ずーっと見ていたい気分にさせられる、
魅力的な5人のペテン師たち。 話はひっかけもツイストも満載。やられた~!って感じなのも爽快。
とっても良質のベッドタイムストーリー。

ところが、S4になって、トーンが変わる。
メイン中のメイン、リーダーのミッキーがいなくなる。 もちろん大きな違い。 また、Hustleの好評ぶりに目を付けた、
アメリカの会社がスポンサーを申し出てきた。予算もいっぱい使えるし、いろいろなことができるようになったらしい。

それにしても、S1-S3までのクールなエレガントさが影をひそめ、何気に話はビッグにかつ下品になりがちなのが…。 
別に脚本家や製作者まで変わったわけではない。 だけど、お金を出す人はトーゼン、クチも出したんだろうなぁ。

Ep.1、ダニーのふかしが発端でロスまで来てしまう4人。(何故ファーストクラスで飛ぶんだろう?)
「カンザスとは違うわね」に始まり、『オズの魔法使い』の引用が満載。
Hustle に限らず、『オズの魔法使い』の引用は良く見られる。でも、S1-S3までの間にあった記憶は
あまりないなぁ。スポンサーへのサービス?こういう引用って、私たちのことわざと一緒よね、きっと。
ただ、その後耳を疑う話が…! ダニーがハンバーガーを食べながら、アッシュに講釈を垂れている。
フランス人はチーズクォーターパウンダーをローヤルチーズと呼ぶ云々…。

タランティーノのパルプフィクションのパクリである。
ヨーロッパから戻ってきたばかりのビンセント・ベガ(ジョン・トラボルタ)がどこの国はどーだったと、たらたら話しているもののうちのひとつである

いや、これってさ~、いかにもアメリカ一番!と思っていそうな、井の中の蛙状態のアメリカ人が同じ蛙のアメリカ人に
「ヨーロッパ人は信じられねーよな~」といった調子でしゃべっているので面白いのであって、アメリカに来ている
イギリス人が、イギリス人に「フランスでは~」と話してもぜっんぜん、おもしろくもないじゃないか! 

機械屋アッシュは賢く、「メトリックだから問題なんだろ?」とばっちり正解。(注1)
それに対して「フランス人だからだよ」というボケた返事をするダニー。 ダニーのおバカぶりがオチ?
しらっとした流れの中でズーズー音を立ててコーラを飲むダニーの行儀の悪さが目に付く。なんだったのだろう、これ?

Ep.1(そしてEp.2)ひとり減った分、こき使われるアッシュ。年長者にはもっと敬意を払わんかい! 
と思いつつ、アッシュの芸域の広さには感心した。オネエのスタイリストにはびっくり。
オールマイティじゃん。控え目なのに、いざという時には何でもコイ。こーいう人の方が素敵だよね。
S4の間に私的にはアッシュの株が一番跳ね上がった。全編通してすっごくいい男じゃない。
地味めのおじさんだと思っていたアッシュがこんなにかっこいいなんて! アタシの目はふし穴だわ。

粋なミッキーが主導を取るのと、成り上がり志向の塊のダニーが出しゃばるのとでは、かなり進行が違う。
その頑張りと、ど根性はエライけど、かつてのエレガントさが全くないのは、見ててキツイなぁ。 まるで、スポ根ドラマだ。

Play dirty’としつこく食らいつくダニー。 いやー、げっひ~ん! ミッキーなら、絶対しないよ‐!!
だけどその下品にギロっとした表情がすっごくぴったりで、ゾクゾクしてしまった。
ヘタレかと思ってたのに、ブルーザーぶりが似合ってるじゃないか、キミの場合は。

ただし、全体としての下品さはちょっと勘弁してよ~って感じ。
まったく無関係なのに、いい様に利用され、踏んだり蹴ったりの目にあわされた気の毒なハミルトン氏。
こういう犠牲者は前はなかったよね~とちょっと爽快感が目減り。(笑わせてもらったけどね)。
欲深の人非人をお仕置きとばかりに、詐欺を仕掛け、汚いお金は身に付かないんだよ~と教えてあげてるのが
おちゃめで粋なのに。 手前勝手な詐欺のために、無関係の人まで巻き込むのはイタダケナイと思うぞ。

Ep.3とEp.4と続いて狙われるのは女。米流にクォータ方式採用、女の極悪人も一定数入れろって? 
どっちも嫌なオバハンではあったが、この2話はあまり爽快感がない。Ep.3の最後、ダニーたちが揃って登場。 
オバハンが「だましたわね」と悪態をつくのだが、正義の味方よろしく、並んでご登場・・・・これは、ダサイ。 
怒るオバハンを陰から見てにやっと笑って、すっと金を持って消えたほうがよっぽどクールだ。

Ep.4はさらに・・・。チャリティで得たお金を自分のポケットに入れてる強欲ババァから金を巻き上げるのだけど、
強欲ババァを持ちあげ、ショーに集まった人々の面前で大恥をかかせて貶める。
彼らにそこまで他人を裁く権利はない。 傲慢だよ。 なんでこんなにリベンジモードが入るわけ?

・・・と思っていたら、Ep.5は絶好調で、リベンジ話そのもの。
但し、今度はリベンジされる側になってしまったペテン師たち。サムライチックな頭して刀を振り回す東洋人が登場。 
誰が観ても明らかに、すべてタランティーノ風。 その割には話のテンポがこれまでにないほど良くないのだ。
画面を横切ってとび蹴りをするダニーには失笑。 明らかにCGのコピペなんだもん。

今回は有り金すべて取られてしまうのだが、最後は彼らをだました、即席ペテン少女のモノローグで終わる。 
ダニーが金の話をしているのを耳にした貧しい少女は、一大プランを思いつく。 詐欺師をひっかけ、金を横取りして、
搾取される奴隷人生から抜け出すのだ。 金を手に新天地へと旅立つ男と女(兄と妹なのだが)。
これもトゥルー・ロマンス以来、踏襲されているタランティーノ流のエンディングじゃないか。(注2)
フェアリーテイル調の語り口も。

おまけに、即席ペテン少女と兄は、賢いだけでなく、仁義を通し、弱きを労わることのできる、立派なCon artist であった。 
泣かせるじゃないか。

とはいえ・・・。
ねぇ~、こういう話ってさ~、シリーズの一話使うんじゃなくって、『番外編』とかでおまけでつけてくれません?
その方がずっとありがた味も楽しさも増すと思う。 タランティーノ節も番外編のお遊びと思えば、ストンとくる。

それにしても、「5人がマジックナンバー」と増やされた新人、ビリー。 
ツタンカーメン(というか、ツタンカーメンの守護犬?)のような容貌はチャーミングでもないし、表情にも乏しい。 
なんでこんな貢献度の低い人を追加したんだろ? おまけのインタビューの方が雄弁で表情豊かだなんて、
ダイコン役者ってことじゃん! 居なくてもよかったよ、アンタ。 まぁ、この人はS4のみでもう出てこないからいいけどさ。

残すはシリーズのグランフィナーレになる(はずの)最終話である。 なんかもう息切れしてきた。

追記: あまりなじみのない方のための注釈

注1: アメリカ&大英帝国、とその他の世界の大半の先進国では単位の使い方が違う。
メトリックは我々日本人ですら、フツーに使っている国際基準。 重量はキロ、グラムで表す。
もうひとつのインペリアルはポンドで表すのだ。クォーターパウンダー(日本でもマ○ドナルドにあるでしょ)は
1/4ポンド(pound)の肉で作ったハンバーグだ。 メトリック換算では113㌘という、ハンパな重量なので、呼びようがない。
国際基準に沿えば、おかしいのはアメリカ&大英帝国なのだが、彼らはそうは思わない。
それでも、10数年前から、イギリスではスーパーなどの食料品の表記はキロ、ポンドの併用が義務付けられた。
助かったよ~。 わかりやすくなって。 欧州連合万歳!

注2: トゥルー・ロマンスは金のなかったタランティーノがトニー・スコットに売ってしまった脚本である。 
オリジナルは、映画と違い、男は死に、女がひとり金を持って逃げるというものであった。 
なので、このパターンをここからタランティーノ節と呼ぶのは厳密には正しくないかも。
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