2012年10月8日月曜日

裏切りのサーカス Tinker, Tailor, Soldier, Spy

8月末のレディースデー、昼間観に行ってきました。(結局DVDを観る前に映画館へ)
映画は古巣で書こう(追記2016.09.14:古巣のレビューはこちら)と思っていたのに、映画登録が何故かできない。3回ほどトライしてgive up.
…あそこのサーバーがイマイチなのは昔からだけどぐったり。 なので、こっちに書きます。

大スクリーンで観に行って良かったわ♪ 
帰宅してからDVDでも観てみたけど、やはり映画仕様のモノは多少大きめの液晶でも画面が思いっきり暗くなるのね。
迫力の差だけでなく、大スクリーンの方が観なくていいものまでも、はっきり見えてしまうのがよくわかりました。 
あ、でもせっかくの演出だから見えなきゃ意味ないわよね、飛び散る脳漿とかも(-_-メ)

個人の期待度が高過ぎたのか、ちょっと思ったほどじゃなかった…感はあるけど、それでもDVDで見直すくらいには面白かったです。

ゲイリー・オールドマン、老けましたねぇ・・・ 

ホント老兵って感じで。 最後に復職(どころか大出世)するのだけど、大丈夫かしらと思ってしまいました。 
こんなに年いってたんだっけ? と思うくらいの老人ぶりです。
続きがいかにもありそうな終わり方だけど(制作されるんですよね?)、若人に席は譲った方がいいのでは?とか不謹慎なことを考えてしまいました。

ゲーリー・オールドマン初対面の記憶は『ローゼンクランツとギルデシュターンは死んだ』という、トム・ストッパード作のハムレットの番外編コメディ。
ティム・ロスと一緒に出てましたよ。 あれっていったい何年前の映画なんだろう? と思ったら1990年。 
20数年前なのかぁ・・・。 レオンとかでブレイクする(したっけ?)ホンのちょっと前だったのね。
レオンの悪徳刑事とか、エア・フォースワンのロシアのテロリスト、いっちゃってる人や、いやぁ~なヤツを演ったら、天下一品。 でも情けない男役も結構観たなぁ。
芸幅は広い怪優だとは思っていたけど、余りにも老人に成り切っちゃっていて・・・。

DVDおまけで付いていた、Deleted Cut。 スマイリーがフラットで料理をしている長まわしのワン・ショット。 
これはそもそもなぜ脚本にあったのでしょう? スマイリーの老人ぶりを強調するため?
でも、この無意味なカットされたシーンに、涙流して笑ってしまいました。(真面目な意図があったのだったら申し訳ないけど)

ラジオから流れる音楽は70年代のヘヴィメタ(何故?)。 スマイリーは花柄のエプロン(!)をつけ、フライパンを火にかけ(これが電磁クッカーなので、温まるまでに時間がかかる)待つ間に窓の外を眺め、鳥(カラス?)の声を聞き、フライパンが温まったのを確認すると、卵を一つ割って、目玉焼き。 
目玉焼きが焼けるまでにまた時間がかかるのだけど、ひたすら待つ。出来上がった目玉焼きを無器用そうに皿にのせ、塩をかけて食す。 お皿とカトラリーのあたる音が静かに響く・・・というシーン。
これが数分間のワンショット。 あまりにもしょぼいゲイリー・オールドマンとミスマッチの花柄のエプロン。 
笑っていいシーンだったのかは不明だけど・・・息切らして笑ってしまいました。ごめんねー。

キャメルのコート姿のコリン・ファースがとってもカッコ良かったけど、最後にはがっくり。 
犯人がわかるまでの間に、もうちょっと捻りが欲しかった気がする。 だって盗聴されてるロシア語の声の主が誰かよく判らないうちに、犯人が明かされてしまうんだもの。 
トレイラーに出てくる『西側は醜くなった』ってシーン、これ、宣伝で使っちゃだめよぉ~。 カンのいい人だったら気付いてしまいます。 私は後で見て、なぁんだ、ヒント出してあったんだ~と思ったクチですが。

ところで、『暗号名はモグラ』って書いてる字幕をみた気がするのですが、Moleってコードネームじゃないよね? 
こういう敵方から潜伏してる裏切り者のことって、普通にMole(もぐら)とかRat(ねずみ)とか呼びませんか?

ベネさん演じるギラムが『明らかにゲイ』とまでは思いませんでした。 どこをどう見たら、『明らかにゲイ』なのだろう? 
熟読は放棄したままの、Sight&Sound のあの記事はなんだったのかしら?

スマイリーに忠実で、スマイリーの浮沈に誰よりも一喜一憂し、復活を一番喜んでいる男なのは確かだけど。 スマイリーの不遇にホントに悔しそうな顔をする、顔を歪めて・・・。 その表情が恐すぎて、ちょっと引いてしまいました。

『つぐない(Atonement)』なんて、映画には思いっきり涙したけど、べネさん、余りにもイヤな男で(ロリコンの変態)、その上、べネさん関わるところの話の展開が、怒髪天の吐き気ものだったから、記憶から抹殺してしまってましたよ、シャーロックで認識するまで。
やっぱり黒髪シャーロックのべネさんが一番好きだな。 かわいいし、ね。








8 件のコメント:

  1. (再再度トライ!)まずモグラになった理由ですけど、この話は実際のフィルビー事件がネタになっているらしいです。キム・フィルビーというイギリスのMI6の幹部級?の人が二重スパイで結局ソ連に亡命させられたようです。当時ケンブリッジ・ファイブという、学生時代やケンブリッジで友達になった5人くらいがみんな二重スパイになっていて、発覚後失脚したりソ連に亡命したりしたらしいです。この話は70年代の設定ですが、実際の事件は50年代くらいで、戦前戦後の激動の時代を人生でもっとも活発な時期を英国を担う国家の中枢にかかわれるエリートとして生きた男たちが、様々な経験と思想の変遷から皮肉にも二重スパイとなるに至ってしまったようです。日本で言う、日航機ハイジャック事件の実行犯たちみたいな感じでしょうか。一般人から見れば、なんで北朝鮮?と思うけど・・・彼らはそれがいいと思った・・・フィルビーに関しては厳しくて横柄で抑圧的な立派な父親、の存在があり、育っていく時期の影響から、英国権力中枢ではないもの、に理想を夢見てしまった・・・みたいなことでしょうか。イギリスではフィルビー事件は日本での日航機ハイジャックくらいには、有名だと思うので、一般人にとっても二重スパイは、理解はできないけどああいう人たちいたよね、という認識じゃないかなー、と思います。ルカレはMI6出身であり、作家になってからはMI6歴史記録作家という職業も裏で担っていたそうで、この50年代の事件を70年代に舞台を移してTTSSの物語を作ったそうです。ちなみにルカレは回想のクリスマスパーティのシーンでパーティのゲストとしてカメオ出演しています。ルカレ、ナイト・マネジャーにも出てたらしいんですよね!気づかなかった!(とりあえずここまで掲載されるか、送信してみます!)

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    1. そのスパイの物語・・・で全然別の話なのですが、ロンドン・スパイ(これはネトフリで配信してるはずです)がまぁ、目玉は男の故二人の純愛物語なのですが、タイトル通りというか、往年のスパイ、それが失脚組とでもいいましょうか。虐げられたスパイの悲哀物語みたいな語り部がいて、諜報機関がこわくって(もう、全くジョージオーウェル1984の世界)
      MI6が二重スパイじゃないかと疑って、亡命を持ちかけたり、部下にスパイがいて失脚して以降ずっと監視付きの隠遁暮らしのスパイとか結構怖い話満載。出演者がみんな味があっていいのですよ。シャーロットランプリングとか。よかったら見てください。

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  2. 無事コメント載ってうれしいです・・・そんな作品もあるんですか!・・・今はTTSSの頭脳戦で頭フルなので、また落ち着いたら見てみます・・・TTSSがちょっと見眠くなるのは・・・やっぱり主人公スマイリーのオールドマンの顔、表情が、古くなって汚れた目立たない大きな壁、みたいにそこにあるだけ、って感じだから、だと思うんですよね。だけど、スマイリーという人は、そんな感じで全然動かないように見えるんだけど、本当に必要なとき必要な分しか動かないんですよね。もさっとしていて。だから奥さんにも浮気されちゃうんだと思うんだけど、・・・でも、彼だけがこの緻密なスパイ戦を泳ぎ切る、というか、コントロールも大騒ぎして結局失意のうちに退職して死んだ・・・東側の罠に引っかかったから・・・アレラインたちはもちろんモグラの策略、つまりカーラの仕掛けにのせられていた・・・その上の次官と大臣もしかり、スマイリーに言われなきゃ気づかなかった・・・ピーターも危うくだまされるところだった・・・ビルも自分では歴史に名を残す人と思ってやってることが、結局カーラに動かされている、リッキー・たーに至っては甘すぎて自分の身さえ危なくなっている・・・プリドーもブタペスト行く前にビルにあってしまった・・・スマイリーのあの、古く薄汚れた壁のような顔の中に、ぼっかり空いた穴のようなメガネの二つの目だけが・・・もさっとしてるのに、真実を見抜こうと、じーっと見る、みたいなキャラクター。車の中にハチが1匹入り込んで、ピーターが一生懸命追い回すのに、スマイリーがじーっと蜂を見ていて、窓際に来たときにすっと窓を開けて追い出しますよね!あれが、彼のすごさを表しているんですよね!
    あと、これは官庁の組織なわけだけど、組織の中の男社会の出世と失脚の物語でもあるんですよね、半沢直樹みたいな。スーツで書類カバンもって歩いているだけの勤め人社会描いているような。
    そういうところから、ドキドキするスパイ物、と言われてみても、なんか、動きが少なくてさえない画面だと思うのですが・・・年取ってくると、ああいう衰えちゃった老人の、眼力と実力が、実はまだだれよりもある!なんていうのが、本当にヒーローな感じしてうれしい、というか、つまりそういう人いるんだ!みたいな驚き、かな。古ぼけた壁に、実はものすごいもの見つけちゃったみたいな!

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    1. Vadimさん!コメントして頂いていたのに、お返事してなくってごめんなさい🙇(汗)
      それともう一つのブリクサのコンサートありがとうございます!!!

      本当に必要な時に必要な分しか動かないスマイリーってなるほどーと思いました。
      なんか私TTSSは久々に冷戦中の話!みたいに先に心躍りすぎて、拍子抜けした感じです。
      (私実は、ベルリンの壁が崩れた時に真っ先に思ったことが、「007」と「エロイカより愛を込めて」はどうするんだろーこれから?だったのでした)

      プリドーは確か学友だったんじゃなかったですか?ビルの・・・。そういえば全然別のところで、プリドーはビルの裏切りが許せず、殺したってあったのですが…私はおプライドの高いお坊ちゃんのビルがソ連送還とか不名誉な目に合うのはさぞ辛かろうと、察してビルを殺してあげたのだと思ってたのですが。ペレットでちゃんと頭狙って、無様にもならず確実にすっと死ねそうなやり方で。
      ところで全然話変わりますが、特典って何かついてました? スマイリーがひとりで淡々と目玉焼き作って食べるシーン。Deleted Cutなのですが。


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  3. れんかさんありがとうございます。私もソ連崩壊で・・・映画界もある意味様変わりしていくんだろうなー、と思いました。

    アンクル・ブックを読んだときに、ナぽ・ソロは、毎日いつ核戦争始まるか、と憂鬱になっていたアメリカ人が現実逃避する、夢のドラマだった。敵はスラッシュだし、ロシア人がアメリカ人と一緒に敵と戦うのだから・・・と書いてありました。アメリカ人は日本人以上に、第3次世界大戦がおこったら・・・と心配で、現実逃避の夢を見たんだなー、と思います。ルカレやレン・デイトンの書く東西冷戦のスパイ戦の物語を知って、ますますそれを感じました。

    プリドーはビルの親友、一心同体の関係だったんですよね。そして、スマイリーに聞かれていましたが、プリドーは前から親友が実はもぐら・・・と感づいていた。スマイリーも感づいていた。でも、どの程度かは、わからなかった。プリドーがハンガリーにモグラが誰か、教えてもらいに行く、と行く前にビルに言ったのは、ビルが気を付けるように。まさか、ビルがソ連側にすぐ知らせて、自分が罠にかけられるとこまで行くとは、思わなかった・・・ビルもプリドーが撃たれるとは思わなかった・・・生け捕りとハンガリーの西側工作員の名簿との交換、が約束のはずだった・・
    その辺を知ると、クリスマス・パーティの回想シーンなど、プリドーがビルを見て、心配そうな目をしながら、そんなに案ずるほどでもない、取り越し苦労だな、と自分を納得させていたのがわかり、マーク・ストロングの目のすごい演技です。コリン・ファースも目と、神のような怒り、とか、ルカレの原作通りのすごい、演技と思います・・・

    私もプリドーが最後ビルを撃ちに行ったのは自分が彼の始末をつけてあげなければならない、と思ったような気がします。ビルは共産主義が正しいと思っていても、クリケットの無い国に暮らすのはつらかったでしょうから。ビルを撃ちにいかなくては・・・と自分の気持ちを固めようとトレーラーハウスの中でお酒を飲んでいるとき、ビル・ローチ少年が訪ねてきて、プリドーが、自分とかかわらせないために、怒鳴って追っ払いますよね。あれも、プリドーのつらい決心と少年への思いやりがあふれて、涙涙です・・・

    私の借りたDVDは何もついてなかったので、特典つきのを買おうと思っています。こんなにはまっちゃった映画は最近ないので、これは手元に置きたい作品です。では、ブリクサで!

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    1. Vadimさん!なんだかこのお話はもう、オフ会でしてしまった感じがしますが(笑)、特典の話。
      私が持ってるのにはDELETED CUTで、スマイリーが花柄のエプロンつけて、目玉焼きを作って食べるまでのシーンがあるのですが、いやカットになったのは見れば納得なのですが、ちょっと見ものです。英版でも入ってるので日本のでも入ってると思います。

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  4. れんかさん、さすがですね!前に教えていただいた、ロンドンスパイですが、もうご覧になっているんですものね・・・私は、トムハのチャイルド44のことを調べていて、原作者はトム・ロブ・スミスで、ソ連時代の抑圧によってもたらされた人々の悲惨な運命のことを、3部作くらいで小説に描いた人のようですが、ロンドンスパイも彼の原作&プロデュースで、ロンドンでのソ連がらみのスパイたちの運命を描いている、ということで、この作家はその辺のことを調べまくって小説にしてるんでしょうね。なんか、事実は小説より奇なりと申しますが、ソ連時代の悲劇って、まだまだ西側には知られていない、細かい事情や状況があるんだろうなー、と想像します。ソ連が崩壊してやっと少しずつ踏み込んだことまで描けるようになってきた感じ。でも、トムハのチャイルド44も、現在のロシアでは、史実をまげている、とかいう理由で、公開直前にロシアでの公開禁止になってしまったそうです。アフリカ諸国とか、サウジアラビアあたりとか、もちろん北朝鮮、バングラディッシュ、東南アジア諸国・・・まだまだ世界に知られてない驚くべき人類の黒歴史のエピソードがあるんだろうなー、と思いました・・・

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    1. 昔(いやもしかしたら今でも)NHKのBSで地味めのソ連映画が放映されたりしたのですが、どれも結構心打たれる話が多かったです。自分が全く知らないって点も含めてすごく考えさせられるものが多いですよね。
      私が記憶に残っているのが、「パパって何?」っていうのと、もうひとつはナチス時代のタイトルも思い出せない話なのですが、ポーランド語だったかなぁ。中国人移民でナチスの犠牲になった子供たちの話で、子供たち(ポーランドの子も含む)が自分の食器だけいつも持ち歩いていて、食べ物がもらえるチャンスを絶対逃さないようにしてるの。もちろん食べ物盗むのも日常茶飯事。中国人の男の子が戦死の知らせを配達してるのですが、ある一軒の家に手紙を届けに行ったらお母さんが死んでて、小さな女の子が残されてたんだけど、その女の子が少年を迎えに来てくれたパパだと思い込んでついてまわってるのですが、その少年も、死んじゃうし。そのあとでも女の子がずっと私のパパは中国人なのって言って他のがキョーレツに悲しかった。もう一人中国人の女の子が出てくるのですが、この子はナチスの変態将校に背中中入れ墨入れられちゃって、その将校は総統が死んだあと、自殺して、持て余した兵士が、難民キャンプのそばに捨ててってくれて救助されるのですが、背中にナチスの鷹だか何だかの入れ墨があるから観られないように自分で焚き木で背中を焼いたり。なんか実話ベースだったらしくて、その女の子は中国に帰ったけど一生結婚しなかったって、ナレーションがあったの覚えてます。

      あと、「フェアウェル、悲しみのスパイ」もキョーレツでした。アンダーグランドの監督のエミール・クリストッツァが主演だったのですが、ちょうどゴルビーの頃の話で、強烈な祖国愛と自己犠牲に飛行機の中で見たのですが、涙とまらなかったです。これはたぶんツタヤにありそうな気がするので、ぜひ見てください。

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